訪問インタビュー<大石準一先生>

東京都八王子市、京王線の山田駅から徒歩1分程歩いた場所にあるマンションの1階に、イアス整骨院がある。
柔道整復師の大石準一先生が今から6年前にこの地に開院した整骨院だ。
開業から7年目を迎え、一人の治療家としてどの様な想いで仕事と向き合っているのか。キュアタス編集部の小林靖が取材した。

イアス整骨院のお名前にはどんな意味が込められているんでしょうか。

当院にお越しになる患者様が、「怪我を癒し」、「疲れを癒し」、そして「いい明日を迎えてほしい」。そんな場が作れれば良いと想い「イアス」と名付けまました。「癒やす」と「いい明日」をかけ合わせた語呂合わせですね。

子供の頃からお母さんの肩もみが得意だったんです。

柔道整復師として開業されて7年目という事ですが、先生が治療家になられたキッカケを教えて頂けますか?

原体験は、小学生の頃に、母親にやらされていた「肩もみ」なんです。
僕には弟がいるのですが、弟は手を抜くんですよね。適当にやってるから、僕と交代させられるんです。なのでいつも僕がしょっちゅう頼まれて。

仕事にしようと本気で考えたキッカケがタイのお寺で学んだタイ式マッサージです。25歳の時だったんですが、バックパッカーとして海外を旅していた時期が1年位ありまして、たまたまタイで興味を持って入門したんです。このお寺は有名な「ワット・ポー」というタイマッサージの総本山で今では学校を運営しています。当時は教科書も手作りで、どちらかというとお寺で修行したといった感じです。

旅に出るまでは電気工事会社のサラリーマンをしながら、バンドを組んでプロを目指して音楽活動を続けていたんです。でも音楽で食べていくのって甘くない。そこで会社をやめて旅に出て、本当にやりたい仕事に巡り合った体験をしました。

でもね、電気工事の経験も生きてるんですよ。電気機器の中には沢山の配線が行き渡っていて電気信号が送られて動いていますよね。これ、人間の身体でいう神経経路なんです。患者さんに説明する時には、そんなふうに例えたりして説明しています。

音楽活動だって、治療に例えられるんですよ。不協和音。身体の悪い人。楽器と同じで調律する必要がある。不調のある部分だけにフォーカスするだけではなく、全体を見る必要があるんです。

僕たちは、患者さんが本来持っている「治ろうとする力」を引き出す「ナビゲーター」なんです。

なるほど、大石先生の経験が活かされていますね。何かに例えて説明していただくとわかりやすいですね。

これは僕の考えですが、人の身体って無理に押し付けると反発が来るんです。もちろん僕らはお医者さんでは無いので、手術したりお薬に頼る事はできない。だから僕らの施術ってのは患者さんが持つ治す力を引き出す事なんです。つまり、僕らはナビゲーターなんです。患者さんは迷路に迷い込んだら、自分自身で出る事が出来ないんです。現在地がどこなのか、すなわち自分の身体の状況がどうなのか、今どこにいるのかが分かっていない。それを僕たちは見つけて説明するんです。

どういう患者さんが多いですか?

年代は、子供から大正生まれの高齢者まで。
部活動をやっている若い学生世代では、特にスポーツ障害が多いですかね。
怪我よりも慢性化した機能障害が多いです。例えばオスグットやらシンスプリント等の症状です。病院に通っていて改善しない様な症状の方が多い。
僕は治療するというより、身体の使い方を教えたり、ストレッチを見せながら覚えてもらう。自分が見本になって。
例えばこんな感じにね。(ストレッチを見せる)

確かに、先生が不健康で元気なかったら、患者も元気になる気がしないですよね。

そう。自分自身が見本にならないとね。

大石先生の整骨院の雰囲気って、何となくですが、ゆっくりとした時間がながれていそう。

え、そうですか?まあ確かに一般的な整骨院のイメージとは少し雰囲気が違うかもしれませんね。

僕のところは予約制で、初診だと1時間取ってる。とにかく患者さんから沢山の話を聞かないとね。そこから症状を説明し、僕の施術法を説明します。その施術で期待できる効果と、改善するまでの期間を示す。ゴールが見えないと通えないですよね。

なるほど、確かにそう思います。
例えば歯科医院に虫歯の治療に行って、先生に治るか分からないと言われたら、不安ですね。「何回で治しましょう」って説明してくださるから、僕たち患者は我慢して通える訳ですよね。

その通りだと思いますよ。あと僕の場合は、特に患者さんの「期待値」を聞く事も大事にしています。
とにかく今すぐに痛みを取りたいのか、慢性的になっている症状を完治させたいのか。部活生なら無理してでも明日の試合に出たいのか、膝が痛い高齢者の方は、旅行に行きたいのか、孫の運動会を見に行きたいのか。

でも時には、どうしても回復の余地がない場合もありますよね?

はい。身体の組織的に完治が難しい症状には、アイパッドで資料を見てもらいながら、説明して納得頂きます。組織的に治らないものも、機能的に回復する見込みがある場合がある。病院で手術しかないと言われて、来院された方も切らずに済む様な場合もある。
その一方で、僕から膝の人工関節が得意な病院を紹介する場合もあるんです。
いくつかの選択肢を提案する中で選ぶのは患者さんです。

まさに患者さん中心の施術者なのですね。

そうなる様に常に心がけています。患者さんは、ここに来る前に、病院なら病院、接骨院、治療院、と色々なところを回って来られるんです。極端な話、みんな違う事を言うから患者さんは不安を感じられるんだと思います。なので、患者さんとはいかに信頼関係を築くかを重視しています。

痛みが半減しただけでは治療家としては「負け」なんです。

初診から信頼を得られないと、その患者さんは次に来ないかもしれませんね。

ギックリ腰の患者さんが、痛みを我慢して何とか来院されたとします。痛みを0から10までの数字で表現してもらう方法があります。来院した時に最大値の10だっとして、施術後の結果が5だった。患者さんは痛みが半減しましたと喜ばれる訳です。でも僕は治療家として負けだと思います。せめて3までには戻したい。初診は一発勝負なんです。

腰痛って、色々な要素が重なってでている症状なんですね。一枚一枚剥がす様なイメージでリリースして行くんです。筋膜、筋肉を一つ一つ緩めていくんです。

とにかく色々なところで診てもらって、でもどこに行っても良くならない。ここなら治るかも。そんな希望を持って来られると思います。でもここで全てが改善出来る訳は無いですよね。なのでプロの治療家として、きちんと見極めて、きちんと説明しないと行けない。何でも直せますとは絶対に言えません。僕は説明を重要視してるんですね。

自宅での生活から変えてもらうように説明している。例えば、立ち方や座り方とかは特に注意が必要。悪い姿勢は、どこかに大きな負担がかかっているので、痛みが起きやすいんです。
例えば、この前来た腰痛の男性患者さん。ズボンのポケットにあらゆる沢山の物をいれてるんです。これでは坐骨神経痛を仕込んでいるようなものです。まずは、全部だしてバックに入れて持ち歩いて下さいと言いました。

治療家は自分自身が健康じゃないとダメ。マラソンは仕事の一つだと思う。

プライベートではマラソンが趣味とお聞きしましたが。

はい。ウォーキングから始めたのが、走る様になって。まずは3キロから走ってみた。段々と距離が伸ばせる様になって楽しくなって。
実は僕自身が腰痛持ちだったんです。マラソンのおかげで改善しました。足が強くなると、腰痛がなくなる。マラソンの前は、腹筋、背筋をつける運動していたけど、運動自体が痛みを誘発するんですよね。だから走る事は良いですよ。走るのにはお金がかからないし(笑)
施術者は体力が必要なんです。マラソンは仕事の一つだと思っている。

あと施術者が見本にならないと。スポーツ少年なんて特にそう。相手を見てますよ。
こんな言葉があります。
「良い教師は生徒にやってみせる。更に良い教師は、生徒のハートに火をつける事ができる。」

なるほど、ストレッチやトレーニングって、心からそう思わないと続かないですよね。僕も三日坊主を何度も繰り返してきました。(笑)

でも患者さんにマラソンを強要している訳ではないですよ。(笑)
無理に勧めた訳ではないですが、以前、肩こりのひどい方に勧めたら、走りはじめて、肩こりが減ったと喜ばれました。その人はそれから、ハーフマラソンに出場するまでになりました。

治療家という職業には、この手一つで人を幸せに出来る可能性がある。

職業としての治療家の魅力って何ですか?

僕らは機械も使いますが、それだけに頼らず、そもそも人間にしかできない仕事で、その技術や効果を高めて成長していくという事に凄く興味がある。
「徒手療法」と言われますが、この手ひとつで身体を治せる事が一番の魅力ですね。
例えば海外に行って、その場に患者さんがいたとします。そんな時に言葉が通じなくても、その場である程度の結果が出せるという魅力かな。

機械に頼るのではなく、機械の力を借りるんです。

院内の機械や施術のメソッドについて教えて頂けますか。

機械から説明すると、まずはマトリクスウェーブという機械があります。

この機械には、細胞外液の循環を改善する効果があると言われる。筋膜に着目し、オステオパシーの源流。
運動器だけではなく、内蔵や脳まで身体全体の循環を改善するというものです。

身体全体には、沢山の膜が存在する。それが全部繋がっている。詳しい事はまたの機会としたいのですが、全体が繋がっていると考える、その部分だけを観るわけだけではだめなんです。定期的に勉強会を開いているのですが、全国各地から集まって症例を共有してやってるんです。勉強会仲間で、今はオステオパシーを本格的に勉強し始めました。

それからインディバという機械があります。

身体の中から熱を発生させる事により、毛細血管や膜が滑なに動く様になる。血流が向上する事による効果です。
簡単に言えば電子レンジの原理なんですが、膝にやると病院でヒアルロン酸を入れた時の様な効果。使い方次第で、色々な効果がある。

インディバは緩める、マトリックスは締める、整える。
これらの機器は、自分を通じて手から微弱な電流を流しながら、施術する方法もあるんですよ。

すごい、手から電流を出すんですか。ゴットハンドみたいですね。

僕にないものは、機械の力を借りる事で、簡単に出来るようになるんですよ。
治療機器って、その施術者の考え方や使い方によって、出る効果が違うんです。チョイスと使い方なんです。これも音楽家を例にだすと楽器と同じなんです。
楽器も演奏家によって、違う音が出ますよね。

さっき施術を拝見しました。ゆっくりとした手技をされますね。

あれはAKAやオステオパシーと行ったメソッドです。
手を当てる事で、五感で感じとるところから初めます。そして機械が良いのか、そのまま手技でやるのか。

マッサージはあまりされないようですね。

ほとんどやりません。
整骨院の看板を出しているとマッサージ目的の患者さんがよく来られるのですが、最近は知れ渡ったのか、そういう患者さんはいないですね。
本当に治したい人、根本から何とかしたいという人が多いと思います。

よく分かりました。本日は、長時間に渡り、ありがとうございました。

<記者のひと言>
穏やかにお話をされる印象の先生で、とにかく患者さんの話を聞くという日頃の姿勢が伺えました。整骨院は常に混んでいて、すぐにマッサージをするイメージがありますが、ここは違うという事が分かります。普段の身体の使い方から根本的に修正していきたいという方にはオススメの先生です。